ブラック企業公表基準から厚生労働省が中小企業を外した理由とは。


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世間から「ブラック企業」と認識されることは、企業にとって計り知れないダメージとなります。2013年に民間有識者が企画委員を務める「ブラック企業大賞」を受賞したワタミは、2014年度の新卒社員を計画の半分しか採用できず、店舗数を大幅に縮小。2015年度には創業以来初の赤字に転落しました。民間組織による認定でもこれですから、国がブラック企業と認定した場合の影響はさらに大きいでしょう。
2015年5月18日より、厚生労働省は一部のブラック企業の企業名早期公表のための新たな基準を採用しました。しかし、その基準によれば中小企業は早期公表の対象外。本記事ではその理由に迫ります。

従来の社名公表時期

ブラック企業問題は過重労働からセクハラパワハラまで多岐にわたりますが、問題となっている公表基準は長時間労働に関する労働基準法違反に関するものです。

 

これまでも違法な長時間労働を強いる企業を公表する手続きがなかったわけではありません。

しかしそれは、

法律違反の事実の確認

企業に対する是正勧告

労働基準法違反容疑等で検察官に送致(送検)

社名の公表

という流れになっており、従来の基準は送検されてはじめて社名を公表する、というものでした。

 

しかし、厚生労働省によると、2013年に労働基準監督署が是正勧告をした件数は11万2873件だったのに対し書類送検された件数はわずか1043件。単純に計算すれば、是正勧告の約1%しか送検・社名公表がなされていない計算になります。
※ただし同一会社が複数回勧告を受けるケースも相当数あると思います。

ちなみに「是正勧告」は企業の自主的な改善を促すのみで営業停止命令のような強制力はありません。
是正勧告数に比して送検が少ないのは企業が勧告→是正を繰り返し根本的な問題解決を試みていないことや国側の人手不足もあるのでしょうが、これでは送検される1%にかからなければブラック企業に大きな不利益ありませんから、実効性は薄かったようです。

 

社名公表の早期化

これを受けて新基準では

法律違反の事実の確認

企業に対する是正勧告・社名の公表

(労働基準法違反容疑等で検察官に送致(送検))

と、送検を待たずに是正勧告の段階で社名を公表できるようになりました。

 

※追記:2016年5月19日、早期公表第一号事案が出ました。

公表されたのは千葉県にある株式会社エイジス。60人以上が1カ月当たり100時間越えの時間外・休日労働(最長は197時間)を強いられていたようです。

厚生労働省の発表はこちら

早期公表を受けての株式会社エイジスのコメントはこちら

 

もっとも、これには一定の要件があります。

※2016年12月26日に公表の新基準が発表されました。詳細は下記。

指導・公表の対象は、次のⅠ及びⅡのいずれにも当てはまる事案。

 

Ⅰ 「社会的に影響力の大きい企業」であること。

⇒ 具体的には、「複数の都道府県に事業場を有している企業」であって

「中小企業に該当しないもの(※)」であること。

※ 中小企業基本法に規定する「中小企業者」に該当しない企業

 

Ⅱ 「違法な長時間労働」が「相当数の労働者」に認められ、

このような実態が「一定期間内に複数の事業場で繰り返されている」こと。

1 「違法な長時間労働」について

⇒ 具体的には、①労働時間、休日、割増賃金に係る労働基準法違反が認められ、

かつ、➁1か月当たりの時間外・休日労働時間が100時間80時間を超えていること。

2 「相当数の労働者」について

⇒ 具体的には、1箇所の事業場において、10人以上の労働者又は当該事業場の4分の1以上の労働者

において、「違法な長時間労働」が認められること。

3 「一定期間内に複数の事業場で繰り返されている」 について

⇒ 具体的には、概ね1年程度の期間にか所2か所上の事業場で「違法な長時間労働」が認められること。

※厚生労働省ホームページより引用


※20161226日、企業名公表の新基準が発表されました。

大企業に限定されている点は変わりませんが

電通の過労自殺を受けての改正のようで、より過労死・過労自殺を意識した内容となっています。

詳細はこちらに掲載されていますが、

大きな変更点は、

1.違法な長時間労働の内容が月残業80時間に引き下げられた

2.過労による労災支給決定がされた場合も新たに公表の対象となった

といった点です。


Ⅰを見ると早期公表の対象が中小企業が除外されている(≒大企業のみ早期公表ができる)ことがわかります。

しかし、2015年の中小企業白書によれば、日本企業約386万4000社のうち大企業はわずか1万1000社(約0.3%)。残りの385万3000社(約99.7%)は中小企業が占めています。

また、財力も従業員数も少ない中小企業のほうがブラック企業化しやすい、という指摘も。

 

こういったこともあり新基準に対しては、ブラック企業問題の温床である中小企業を早期社名公表の除外する点で実効性が薄いとの批判も多いようです。

 

なぜ中小企業が公表基準から外されたのか。

しかし、厚生労働省の発表を見ると、その意図は見えてきます。

 

1.効率性

まずは新基準の概要を見てみましょう

長時間労働に係る労働基準法違反の防止を徹底し、

企業における自主的な改善を促すため

社会的に影響力の大きい企業が

違法な長時間労働を複数の事業場で繰り返している場合、都道府県労働局長が経営トップに対して、全社的な早期是正について指導するとともに、その事実を公表する。

※厚生労働省ホームページより引用

大企業は企業数は全体の0.3%と少ないですが、そこで働く従業員数は決して少なくありません。中小企業の従業員数が約3217万人なのに対して、大企業は約1397万人。日本の労働者の3割以上は大企業で働いているのです。

平均すると大企業1社当たりの従業員は1270人。他方で中小企業一社当たりの従業員は約8人。

ちょっと乱暴な計算ですが、大企業1社に対する是正勧告・社名公表は中小企業1社に対するそれの約160倍の効果(=社会的影響力)があることになります。

労働基準法違反の有無を臨検する労働基準監督官は2000人程度といわれていますから、有限なマンパワーをできる限り効率よく運用しようとすれば、早期公表の基準を大企業に絞ることは十分に理由があるといえるでしょう。

 

また、ほとんど名前を知られていない中小企業の名前を公表するよりも誰もが知っている社会的に影響力の大きい企業(大企業)を公表したほうが社会的関心も大きくなることは間違いありません。

是正勧告を受けた企業のみならず、他の企業に対しても「自主的な改善」を促すためには中小企業よりも大企業を公表したほうがはるかに効率的です。

 

2.現実性

また、是正勧告を受けた企業が実際に労働環境を是正できるのか、という観点からも、公表対象から中小企業を外した理由を見いだせるように思います。

 

冒頭で述べたとおり2013年の「ブラック企業大賞」を受賞したワタミの業績は下がり続け、2015年年3月期には連結の営業損失20億7200万円、経常損失34億600万円と創業以来初の赤字に転落する事態に陥りました。

この例を見てもブラック企業と世間に認識されることがいかに企業にとってダメージが大きいかは明らか。

しかも是正勧告からの公表の場合、ブラック企業大賞のような民間団体ではなくいわば国のお墨付きですから、企業にとってその影響はより深刻になる可能性があります。

ワタミは大企業だからどうにか踏ん張っていますが、中小企業であればひとたまりもありません。

いたずらに改善見込みの薄い中小企業の名前を公表しても会社がつぶれて失業者が増えるだけ。だとすればはじめから是正の見込みの高い大企業に的を絞る、というのも合理性がないわけではないでしょう。

 

ただ、実際には大企業しか公表しない運用なったとしても、改善可能な中小企業をけん制するという意味でも、基準から中小企業を除外する必要があったのかという疑問は残ります。

度重なる是正勧告を無視する大企業が相当数あり、早期公表を大企業に限定したのはそういった企業に対するメッセージなのではないか、と勘繰りたくもなりますが…

 

ブラック企業はなくならない?

特に2の改善に現実性があるのか、という視点は重要でしょう。

 

企業はなにも好きでブラック化しているわけではありません。

株主や経営者が私腹を肥やすために労働者を酷使しているというのはごく一部。

ほとんどは価格競争等による経営状態の悪化によりやむなくブラック企業になっているようです。

 

国際化による競合企業の増加や価格競争の激化などにより、今後企業の業績がどのように変化するかは誰にもわかりません。

東芝やJALのようにかつてトップレベルだった企業が窮地に立たされることもあるのです。

経営状態の悪化がブラック企業増加の原因であるとすれば、厚生労働省の努力も

むなしく、今後ブラック企業がますます増加する可能性は十分にあるでしょう。

会社に労働条件を決められるサラリーマンである以上、たとえ現在ホワイトな企業に勤めていてもブラック企業の問題から逃れられません。

 

ブラック企業問題から逃れる方法は一つ、サラリーマンをやめて自分で働き方を決めることです。

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