ブラック企業の定義を離職率残業時間パワハラの有無などから考える。一言でいうと※※な企業。
もともとはネットスラングだった“ブラック企業”という言葉。徐々に現実社会にも浸透していき2013年には流行語大賞にノミネートされるほど広く使われるようになりました。しかし、言葉自体は浸透しているものの、ブラック企業を一言で説明してください、といわれると意外と困るのではないかと思います。今回は、ブラック企業の定義について考えていきましょう。
厚生労働省の定義
ブラック企業は大きな社会問題の一つ。厚生労働省をはじめとした行政が介入することも多い問題です。
まずは厚生労働省がブラック企業をどうとらえているのかを見てみましょう。
実は厚生労働省は“ブラック企業”を定義していません。
その理由は別の記事に書きますが、もちろんこれは厚生労働省がブラック企業を問題視していないことを意味するわけではありません。
※参照:厚生労働省がブラック企業の定義を曖昧にする理由とは。
厚生労働省のホームページによれば
Q.「ブラック企業」ってどんな会社なの?
A.厚生労働省においては、「ブラック企業」について定義していませんが、一般的な特徴として、
① 労働者に対し極端な長時間労働やノルマを課す、
② 賃金不払残業やパワーハラスメントが横行するなど企業全体のコンプライアンス意識が低い、
③ このような状況下で労働者に対し過度の選別を行う、
などと言われています。
このように厚生労働省は、過重労働、サービス残業、パワハラ、労働者の使い捨て等を問題視していることがわかります。
『「若者応援宣言」事業』の基準
厚生労働省はブラック企業を定義しませんが、他方でこんなことも述べています。
厚生労働省では、「ブラック企業」という言葉は使わず、
その問題点を端的に示す表現として「若者の「使い捨て」が疑われる企業等」と称して対策を展開しています。
具体的には若者の「使い捨て」が疑われる企業等」の特徴である過重な長時間労働の改善や、パワーハラスメントの防止・予防に向けた取組等を実施しています。
ここでいう「対策」の一つが『「若者応援宣言」事業』の認定でしょう。
これは、
・一定の労務管理の体制が整備されており、
・若者(35歳未満)を採用・育成のため求人の申込み又は募集を行っており、
・通常の求人情報よりも詳細な企業情報・採用情報を公表する中小企業
を厚生労働省が「若者応援宣言企業」と認定することで、求職者とのマッチングを促進する制度です。
一部メディアでは国が“非ブラック企業”を認定した、として報道されたこともありました。
『「若者応援宣言」事業』の認定を受けるための以下の10個の基準をすべて満たす必要があります。
(※基準は読み飛ばしても大丈夫です。)
[1] 学卒求人※1など、若者対象の正社員※2の求人申込みまたは募集を行っていること
[2] 若者の採用や人材育成に積極的に取り組む企業であること
[3] 以下の雇用情報項目について公表していること
・新卒者や35歳未満の若者の採用者数・離職者数
・研修内容
・前年度の月平均所定外労働時間
・有給休暇の平均取得日数
・育児休業の取得対象者数・取得者数(男女別)
[4] 過去3年間に新規学卒者の採用内定取消しを行っていないこと
[5] 各種助成金の不支給措置を受けていないこと
[6] 過去1年間に事業主都合による解雇または退職勧奨を行っていないこと
[7] 重大な労働関係法令違反を行っていないこと
[8] 暴力団関係事業主でないこと
[9] 風俗営業等関係事業主でないこと
[10] 青少年の雇用の促進等に関する法律施行規則第2条第5項イにより認定を取り消された事業主に属する事業所である場合は、取消しの日から3年以上経過していること
※1 大卒等求人については、「既卒3年まで応募可」であることが必要です。
※2 ここでいう正社員とは、直接雇用であり、雇用期間の定めがなく、社内の他の雇用形態の労働者(役員を除く)に比べて高い責任を負いながら業務に従事する労働者をいいます。
少し複雑ですが、募集年齢や離職者数の提示、賃金や労働時間等を定める労働関係法規の遵守、会社都合解雇の有無等を要件に挙げていることからすると
厚生労働省はブラック企業問題の中でも「若者の「使い捨て」」を特に問題視していることがわかります。
[1]から[10]まですべての基準を満たす企業は「若者応援宣言」企業と認定されますが、逆に満たしていない基準の数が多くなるほどブラック度が高いといえそうです。
「ブラック企業大賞」上の定義
ブラック企業を語るうえで「ブラック企業大賞」は外せません。
ブラック企業大賞は、弁護士・大学教授・作家などから構成する「ブラック企業大賞企画委員会」が運営する、その年に象徴的だったブラック企業を表彰(?)する企画。
2012年に始まって以来Web投票では毎年2万票近い投票があり、大賞に選ばれた企業は翌年の採用予定人数の半分しか新入社員を確保できなくなるなど、その影響力は絶大と言われています。(もちろん、賞の影響のみではないでしょうか。)
ブラック企業大賞では
ブラック企業には幅広い定義と解釈がありますが、「ブラック企業大賞」では次のようにブラック企業を定義し、その上でいくつかの観点から具体的な企業をノミネートしていきます。
ブラック企業とは・・・・
①労働法やその他の法令に抵触し、またはその可能性があるグレーゾーンな条件での労働を、意図的・恣意的に従業員に強いている企業、
②パワーハラスメントなどの暴力的強制を常套手段として従業員に強いる体質を持つ企業や法人(学校法人、社会福祉法人、官公庁や公営企業、医療機関なども含む)。
また、ブラック企業を見極める指標として
- 長時間労働
- セクハラ・パワハラ
- いじめ
- 長時間過密労働
- 低賃金
- コンプライアンス違反
- 育休・産休などの制度の不備
- 労組への敵対度
- 派遣差別
- 派遣依存度
- 残業代未払い(求人票でウソ)
を挙げ、これらを総合的に判断する、としています。
対象となる労働者を若者に限定していない点や産休や労働組合との関係にまで言及している点など、ブラック企業大賞では厚生労働省より幅広くかつ具体的に指標を示しているといえるでしょう。
強制の有無
また、ブラック企業大賞での定義にある違法な労働条件を従業員に「強いている」企業という部分も非常に大切です。
ホリエモンこと堀江貴文さんは、ライブドアの前身の会社である「オン・ザ・エッヂ」創業時期には、家に帰らず事務所に寝袋を持ち込んで昼夜を問わず働いていたそうです。
もちろんこれは誰かに強制されたていたわけではなく、自分がやりたいことに夢中になっていた結果。
堀江貴文さんはオン・ザ・エッヂの経営者でしたが、仮に労働者であっても給料が安く残業代も出ないが仕事が楽しいから長時間労働をしている、というケースはあるでしょう。
これをブラック企業というのはかなり違和感があるのではないかと思います。
「労働者の意思に反して」という部分も非常に大切です。
ブラック企業を一言で定義すると?
厚生労働省やブラック企業大賞での定義を見ることでブラック企業に対するイメージをかなり具体的にすることができたと思います。
しかし、労働時間、労働内容、賃金、セクハラ・パワハラ、労働者の使い捨てなど現時点でもその問題は多岐にわたりますし、今後新たな問題が出てくることもありうるでしょう。
こういった職場は必然的に辞める人が多くなるため、離職率はブラック企業か否かを判断するための一つの材料にはなりそうですが
リクルートのように独立起業する若手社員が多いから離職率が高い、というケースもあるため、定義に組み込むことは難しいでしょう。
そういったことも踏まえると、ブラック企業を一言で定義するのはなかなか難しいことなのかもしれません。
しかし、あえて一言でいうならば
ブラック企業とは「労働者に過酷な労働環境を強制する企業」
ということになるのではないかと思います。
ブラック企業から解放されるために
もちろん、ブラック企業を定義したからと言って、ブラック企業の問題がなくなるわけではありません。
国の是正やブラック企業大賞企画委員会をはじめとする民間団体の公表等の対象になるブラック企業は氷山の一角。
実際にはその何百倍ものブラック企業が存在することは間違ないでしょう。
また、そもそも企業が好きでブラック化しているとは限りません。
実際には、経営者が甘い汁を吸うために労働者に無理を強いるというケースはごく一部。
特に中小企業の場合は、経営状態の悪さからブラック企業にならざるを得ないというケースもかなり多いようです。
こういったケースでは、いくら糾弾しても是正のしようがないのではないかと思います。
国際化による競合企業の増加や技術革新等により、今後企業の業績がどう変化していくかは誰にも予測できません。
JALや東芝を見ればわかるように、現在大企業と言われていたとしても、数年後数十年後には窮地に立たされている可能性も十分にあるでしょう。
労働者を続ける以上、勤務先がブラック企業にならない保証はどこにもないのです。
ブラック企業から確実に逃れる方法はただ一つ、労働者をやめること、つまり企業に雇われるのをやめることです。
労働者をやめれば、過酷なノルマや労働条件を強制されることもありませんし、上司の理不尽なセクハラ、パワハラをうけることもありません。
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